2007年6月27日  静岡新聞
2007年6月27日静岡新聞

気候難民10億人-温暖化で海面上昇、干ばつ新たな紛争要因にも-

 地球温暖化による海面上昇や干ばつの深刻化によって、今世紀半ばまでには2億から10億人が
現在の居住地を追われ、難民と化す可能性がある。英国やドイツの研究機関がこんな予測結果を
27日までに相次いでまとめた。多くは貧しい発展途上国の住民で、研究者は「大量の"気候難民"の発生が、今後の世界情勢を不安定にする」と警告した。

▼人間の暮らし困難

 環境保護団体グリーンピースはドイツのハンブルク大学と共同で、気候変動に関する政府間
パネル(IPCC)による温暖化影響の予測を基に、海面上昇や干ばつによって人間の暮らしが困難に
温暖化で海面上昇、干ばつ新たな紛争要因にも予測相次ぐなる地域を推定。「今後の人口増加
などを考えると、2040年までには気候変動によって2億人の気候難民が発生する」と予測した。
 難民となる可能性が高いのは、気温上昇で氷が解けることの影響を受ける北米やグリーン
ランドの先住民、海面上昇で居住地が水没するバングラデシュなどアジアの人口密集地帯に住む
人々。これに、島しょ部の住民や干ばつの影響を受けるサハラ砂漠以南のアフリカの農民などが
加わる。一方、英国の民間団体クリスチャン・エイドは、スイスの研究機関と共同で、温暖化
などの気候変動の影響を受け、移住を余儀なくされる人は、50年までに10億人に達する可能性が
あるとの報告書をまとめた。

▼ダルフールは一例

 気候変動が多数の難民を生み地域紛争を激化させたと指摘されるのが、スーダン西部のダル
フール地方のケース。約20万人が殺され、スーダン国内の避難民や隣国のチャドに逃れた難民の
数は200万人を超えるとされるが、大規模な干ばつで多数の農民が土地を離れたことが混乱の
きっかけだったといわれる。 国連環境計画(UNEP)は、ダルフール紛争と環境問題に関する最新
の調査報告書で、この地域で過去80年間に降水量が平均で16一30%減少したことなどを挙げ
「この地域の気候変動は過去に例のない規模で、これが地域紛争に深く関運している」と指摘した。

環境破壊の影響示す-国連環境計画(UNEP)のアヒム・シュタイナー事務局長の話-

 ダルフールの悲劇は、スーダン一国だけの問題ではなく、地球温暖化や無秩序な天然資源の
利用、森林の破壊などがいかにして、地域や、場合によっては一つの国をも不安定にするかを
世界に示した。傷ついた環境が修復され、適切に管理されない限り、永続的な平和は実現
できないだろう。