2004年10月1日  朝日新聞
2004年10月1日朝日新聞

京都議定書 来年にも発効-ロシア閣議で批准決定-

 地球温暖化防止に向けて各国の温室効果ガスの削減目標などを定めた京都議定書が、05年前半にも
発効する見通しになった。ロシア政府が30日、閣議で議定書を批准する方針を決め、数カ月以内に議会
を通過するのが確実視されるため、発効に必要な条件が整う。温室効果ガス削減へ世界的な動きが加速
すると予想されるが、日本の排出量は削減目標と逆に増加しており、新たな国内対策に早急に取り組む
必要に迫られることになる。(7・11面に関係記事)
 京都議定書97年に京都で開かれた気候変動枠組み条約第3回締約国会議(温暖化防止京都会議)で採択
され、先進国に、二酸化炭素(C02)、代替フロン類など6種の温室効果ガスの削減を義務づけた。各国の
90年時点の排出量を墓準に、08-12年の年平均排出量を日本は6%、米国7%、欧州運合(EU)は8%削減
することなどを約束。先進国全体では5・2%削減する。

日本の温暖化対策、急務

 【モスクワ=嶋田数之】ロシア政府は近く、議会に京都議定書の批准に必要な関運法案を提出する。
 下院はプーチン政権与党が圧倒的多数を占め、上院も政権支持の立場のため、数カ月以内の批准が
確実視される。ジューコフ副首相は閣議で、3ヵ月以内にロシアの義務履行への行動計画を策定すると
語った。議定書発効には、55カ国以上が批准し、批准先進国の90年時点の排出量が先進国全体の55%
以上になる必要がある。日本や欧州運合(EU)、カナダなど125の国・地域が批准したが、排出量合計は
44%。最大排出国の米国が01年に離脱したため発効には17%のロシアの批准が不可欠となっていた。 ロシアが批准すれば90日後に発効する。ロシアは、産業界の反対もあり、政府の対応が決まって
いなかったが、EUなどの強い働きかけに加え、引き延ばし続ければ国際世論の反発が強まると懸念した
プーチン大統領が、政治決着を図ったと見られる。議定書の発効で、批准各国は、08-12年の温暖化
ガス削減目標の忠実な履行が求められる。未達成なら、13年以降の第2期間に超過分の1・3倍を削減
することのほか、国際的な排出量取引に参加できないなどの罰則が科せられる。米国、中国、ロシアに
次ぎ世界第4位の排出国の日本は、02年度の排出量が13億3100万トンと90年比で7・6%も上回り、
6%削減の目標達成が危ぶまれる状況だ。02年に策定した地球温暖化対策推進大綱による削減策では、
目標達成はほぼ不可能で、政府は見直しに入っている。環境省は8月、化石燃料へ課税する環境税の
導入を要望した。これに対し、日本経団連など経済界は「国際競争力が失われ、産業の空洞化が進む」
などとして反対、05年度に導入予定の自主参加型の排出量取引制度にも批判的だ。議定奮発効の見通し
が立たなかったため、国内対策の見直し作業は停滞気味だった。環境省は、ロシア政府の決定を
「大きな前進」と受けとめ、今後の議論に弾みがつぐと期待している。