2011年12月5日  朝日新聞
2011年12月5日朝日新聞

温室ガス削減目標の倍必要:
温暖化回避へ「さらに努力を」国連機関が報告


 世界各国が掲げる温室効果ガスの削減目標を積み上げても、海面上昇など温暖化の被害を
避けることは難しく、さらに倍以上の努力が必要-

 こんな最新の研究結果を国連環境計画(UNEP)がまとめ、南アフリカの気侯変動枠組み
条約締約国会議(COP17)で発表した。「京都体制」の次を決める交渉にも影響を与えそうだ。
 報告書は、日本を含む86カ国が自主的に掲げる削減目標などをふまえ、2020年までの
ガス削減量を予測した。15カ国55人の専門家が分析に参加した。
 温暖化対策が取られずにこのまま各国が経済成長を続けると、20年の温室効果ガス排出は
二酸化炭素(C02)換算で、現在の1.2倍の約560億トンに達する。世界の平均気温上昇を
2度以内に抑えるとする国際目標の達成には、120億トンの削減が必要になる。
 ところが、各国が掲げる20年までの目標値を積み上げても、最大で約60億トンしか抑制
できない。対策が進まないケースでは10億トン前後の削減にとどまる可能性もあるという。
 一方で報告書は、各国が目標値を引き上げ、発電や工業、交通、農業などさまざまな
分野での取り組みを強化すれば、最大170億トンまで削減できると分析。
 「実現は不可能ではない」と希望を述べている。そのために、太陽光や風力など再生可能
エネルギーの割合を世界全体で9%(05年比の約3・5倍)にすること、原子力を含む
非化石エネルギーの割合を28%(05年比約1・5倍)に高めることなどを求める。
 東京電力福島第一原発の事故による影響については、「まだ分析されていない」として、
考慮していないという。
 これまで国連に示している各国の20年までの削減目標は、米国17%(05年比)、EU20〜30%
(90年比)、中国・GDPあたりCO2排出量40〜45%(05年比)、日本25%(90年比)となっている。
(ダーバン=小林哲)